SSブログ

玄牝 [2010年]

何から書き出したらいいのだろうか?
いろんな思いがでてきた作品だった。



初めての河瀬監督作品だった。

私がこの主人公吉村先生の事を昔聞いた時に、もしこれから子供を授かるのであれば
ここで産んでみたいと思ったことを記憶している。

吉村先生は助産士さん。
「江戸時代ではこうやってみんな産んでいたんだ。」という自然に任せた出産。
畳の上で、自然の力によってこの世に生を産み落とす。
出産後、妊婦はみんな「気持ちいい」「ありがとう」と連呼する。
妊娠中は、極力体を動かす様にと、施設内で薪割りやぞうきんがけをさせる。
妊婦たちは、ここに通い始めてめきめき妊娠に適した体、健康体になっていく。

「不安が難産を引き起こす。」

「逆さ子だから危ないと不安を仰ぐことを言うけど、全然そんなことはないんだ。」

妊婦にとってはなんと心強い言葉だろうか。

現代医学のいいところは使って、(例えばエコー検査とかね。)そして
人間そのものの力を信じた出産方法。

「死を意識するから生を意識する。」
「産まれて来て死んでしまうこともある。それは神様が決める事であって
 仕方がないことなんだ。」

残念にも体内で死産した赤ちゃんも又、時間をかけて産道を通りこの世に落とされる。
それを選択する妊婦たち。


作品中、肯定ばかりでもない。
第一子を身ごもり、現代医学のおかげで、母子共に無事に生きれた。とコメントする妊婦もいた。
この施設の雰囲気に馴染めない妊婦も取り上げる。

幸せいっぱいの妊婦だけでもない。
妊娠当初から旦那さんが行方不明になって不安に思っている妊婦からもコメントをもらっていた。

人間、吉村先生を追っているワンシーンもある。
障子越しに美しい画だった。

施設内の助産婦さんたちの不平なども簡単に取り上げる。



腹をくくっているな。という印象を受けた。
肯定もせず否定もせず、我々に考えさせる構成。
問題提起、考える時間、それについてのコメント。
ドキュメンタリーとしては、素晴らしいな。

最後に、監督自らのコメントもさらりと挿入し、なんとなく終了。

友人から監督の作品は酔ってしまうと聞いていたが、その理由がわかった。
ほとんどが手持ちで撮影され、フォーカスはオートの為、そんな印象をうけるのがわかる。
多少目を細めてみる場面もあるが、
手持ちでないと撮れないシーンも多いから仕方ないよね。

部屋から庭を望むカットが何度も映し出されたのが印象的だった。
それはまるで産道を通る赤子のような気分にさせられた。
その先の希望を感じる。

作品の中での、出来事というか問題(という言葉が正しいのかわからないけど)に
結構がっつり入り込んでいるのだけど、ソフトな感じに仕上がっている。
現場での信頼感がないとあそこまで入り込めないよね。


生と死を考えるというよりも、人は自然の一部であるということを強く感じた。
自分も口では言って思ってはいるはずだったが、確信までには至らず、
実践している吉村先生がすごいと思った。

「その先の、生を考えている。」
「元気な日本人を産んでくれ。」


良い言葉だなって思った。


鑑賞してるのは、女性ばかりだった。
男性にはきついかもね。
出産シーン初めて見たけど、自分の本当の涙が出たなという気がした。
気持ちよく産まれた子供と、分娩室で産まれた子ともと
潜在意識の中で、何かがちがうのだろうか?
もちろん私は後者の方だけど。


良かったら是非。




----------------------------------------------------------------------
河瀬直美監督 
2010年 日本

http://www.genpin.net/
http://info.movies.yahoo.co.jp/detail/tymv/id337443/

nice!(4)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 4

コメント 2

mayu

カエルさ~ん。。。
今でも観た時の感覚を思い出します。
私も特別な感覚で観てたんです。
私はhatsuさんと同い年なんですが自分の中で子供が欲しいけど恵まれない自分は…ってどうなのか悩んでて、ずっと欲しい、お母さんになりたいって思ってたんです。
でも40歳目前にして『子供がいない生活もありかな…』って何となく思える様になってきてたんですが、やっぱり諦めきれてない自分もあったり…(笑)
この玄牝を観て『気持ちいい出産って???』って凄い事ですよね!
しかも旦那様が途中いなくなった方も本当は不安だと思いましたが幸せな顔をされて出産されてましたね。
あぁ~気持ちいいのね~と女としての喜びを感じれた様な気がしました。

出来ない分、今は旦那様との生活を楽しもうと思ってる今日このごろです。

東京に行ったらhatsuさん、pinkちゃん皆で女子会しましょ♪
これからも遊びにこさせて頂きますね^^b

ありがとうございました!!!

by mayu (2011-01-29 21:31) 

カエル

mayuさん
映画って観るタイミング=精神状態で受け取り方の違いあるものだと常々感じるんだけど、この作品は特に影響されやすいものなのかもと思います。
私は吉村先生の考え方に非常に近くてこの作品をみて妙に納得したのですよね。生まれるってそういうもんだな、みたいな。
そういう編集をする監督でよかったとも思いました。
それに出産は喜びなんだなってことも非常に理解できました。鼻からスイカとかよく言うじゃないですか。それは無理ですもんね笑。

私も子供が出来ないのでどうなるのかわかりませんが、
それも自然の流れに身を任せる方式を取っています。
mayuさんと早くデートしたいな☆

by カエル (2011-02-02 09:47) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。