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我々のものではない世界 [2012年]

インターナショナル・コンペティション部門で大賞受賞したようですね。
おめでとうございます。


朝10時に山形入りしてすぐにみた作品でした。。
観たい映画の一つではあったけど、
いつものパレスチナかなぁ?と思ってあまり期待をしていなかったのが、よかったのかもしれません。
大抵そんな感じで大作に出会えますね。

今回4本観た中では、一番面白かったし興味深かったし、被写体とコミュニケーションを取りたくなった作品でした。


作品はレバノンのパレスチナ難民キャンプでの暮らし続ける人々を追った作品で、監督もかつてはパレスチナ難民キャンプで暮らしていたが、
幼少の頃デンマークへ移民として移り住んだ。
親戚などはまだキャンプに残っており、かつて監督の父親が撮り溜めた
ビデオと監督自ら難民キャンプへ戻って撮影したものとを重ね合わせ作られた作品である。

印象的なのは、「僕がそうさせたのかもしれない。」という監督の一言だった。
彼は外から中(キャンプ)へ出入り自由であるのに対し、一番の友人である被写体の彼は中にいることが義務であり外に出ることを禁じられている身である。その違いは仲良くなるに従って顕著であり疑いようのない事実である。
それによって彼がどんどん追い詰められていくのである。

映画の冒頭は、難民キャンプ内の楽しくも愉快な日常を全面的に押し出している。このまま進むのか?と思いきや、
先ほど話した彼の心が、外へとむき出していく。

周りのパレスチナ人も、精神的に追い詰められる人が増えていく。
いつか自分の土地に帰れると信じているが、一向にそうにならない閉塞感であろう。
映画の終盤、彼が逃亡計画を実行するが、
結局は、強制送還にてキャンプに戻されてしまうという結末。


如何にドキュメンタリーというものが残酷であることがわかるエンディング。
ハッピーエンドなどほとんど考えられない現実が待っている。


今回監督インタビューが無かったのでどうにも話ができなかったのだが、
このときばかりは、監督に近づきこの被写体の彼にエールを贈りたい衝動に駆られてしまった。

彼は、大変優秀な人材だと想う。
人のために生き、統率能力もあり、周りが見えている人間である。
だからゆえに、こんな狭いキャンプに閉じ込めておくには惜しい存在であると確信する。
本来だったら、世のため人のために生きているような青年である。
自分の国であるのに、外に出れない。

今から家族を殺した相手を愛せとは言わないが、
エルサレムを三分割してあげるとかできないものか?
どうにもならないことなのか?

今このときも、起こっているであろう事実にとても息苦しさを感じてしまう。


大変立派な、私的な内容の作品であった。

私が今回観たかった美しいドキュメンタリーの形である。

改めて、大賞おめでとうございます。






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マハディ・フレフェル監督
2012年 パレスチナ、アラブ首長国連邦、イギリス

http://www.yidff.jp/2013/ic/13ic15.html
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コメント 3

hatsu

これ観たいなー。
by hatsu (2013-10-18 05:45) 

ララアント

苦手な部類の映画ですが
カエルさんの素晴らしい語り口に
魅せられました。
機会があれば 是非に観たくなりました。
スマホです…画像の文字が!?
by ララアント (2013-10-18 08:37) 

ララアント

この分野の映画は苦手ですが
カエルさんの素晴らしい"解説"に
魅せられました。。
機会があれば 是非 映画館に足を運びたいと
思いました。

先ほど スマホでコメントを入れたのですが
画像の文字が!?・・・
デスクトップは夫が(株)
久しぶりにノートPCを開きました^^;
by ララアント (2013-10-18 09:00) 

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